行程第一・二日第三日第四日第五・六日
 
8月14日(火)

3時頃ふと目が覚める。その後寝つかれないまま、周りが動き始めるまで床の中で待つ。4時過ぎに、発電機のエンジン音が鳴り出し、調理場で朝の支度が始まったようだ。
 4時30分周りの人々に促されるようにカメラ機材を準備し、池のたもとへ向かう。空には星が輝き雲一つ無い快晴とはほど遠い、空間全体が薄いベールを纏ったような、八ッ峰が霞の中にぼんやり浮かぶ。幻想的な光景ではあるが、写真的にはぼやけてしまって面白くない。
 今朝の撮影会は、口々に「ダメダー」と首を傾げ機材を片づけ、あきらめ顔で朝食へ。食堂は宿泊者全員が揃っているかのような賑わいである。
 7時前、川出さんとあらちゃんが下山する。玄関先まで見送りに出て、記念撮影。
無事下山することとネットでの再会を約束し別れを惜しむ。
 8時、母さんの了承を得、お風呂の落とし湯で洗濯をさせて頂く。
 8時30分稲垣さんと二人で池ノ平へと向かう。途中峠の手前に広がるお花畑で思い思いにシャッターを押す。峠から池ノ平は通い慣れた道だ。やがて池ノ平の池塘が見渡せる撮影ポイントで撮影タイム。仙人池から見たぼんやりした山容も、この地点まで来ると、天に向けてそそり立つ荒々しい岩肌が頭上に覆い被さってくる絶景に圧倒される。のんびり歩いて小屋へ。ちょうど新井さんが「昼頃までに戻ってきます。」と言い残し、北俣の状態を見に下っていくところだった。昼近くまで周囲を散策しながら景色や花々を記録する。新井さんの戻ってくるのを待っていたのだが、昼食に間に合わなくなりそうなため、あきらめて仙人へ引き返す。
 12時30分、仙人池に戻り母さんの準備して下さった「カルボラーナ」をいただく。
 14時過ぎ、何となく雲行きが怪しくなってくる。今日も夕立がありそうだ。心配した雨は降らず、全体を雲が覆った程度で時間が過ぎていく。16時頃雲が切れて青空がどんどん広がると、八ッ峰の上部には立派な積乱雲が現れる。凄い迫力だ。積乱雲に隠れた太陽は雲の隙間から美しい放射状のレンブラント光線を発し、黒々とした八ッ峰と対照的な別世界を創り出す。凄い。自然現象が創る一大ページェントに時を過ぎるのも忘れ、何も考えないで、いろいろな構図でシャッターを押し続ける。ここに来て良かったと再認識。「止められない止まらない」の文句では無いが、山を愛する者はこのような光景に出会えた瞬間を再びと期待を抱き辛い思いをしてまでも山に登る。
 研修を兼ねた剱御前小屋のスタッフが今年も来た。僕自身、剱御前小屋での宿泊は一度もないのだが、早朝の写真撮影等の絶景ポイントは一杯あるとの事だ。是非一度は泊まってみたい。
 盆の休みも終盤になると、ここ仙人を訪れる登山客も減り、夕食を頂く時も家族的な暖かな空気が漂う。
 食事後「鬼が笑うかもしれないが、身体が動くようなら来年もお願いしますね。」と笑いながら母さんと宿泊費の精算をする。明日6時前に出発するため部屋に戻って下山の準備に取りかかる。
 食堂に戻って消灯までの数時間、最後の夜を過ごす。21時床に入る。

うっすら赤く焼け始めた八ッ峰 チングルマの穂

チングルマの穂と仙人池ヒュッテ

ニッコウキスゲ

池ノ平近くから望む八ッ峰、池ノ平池と池塘

池ノ平近くから望む八ッ峰

池ノ平近くから望む八ッ峰、池ノ平池と池塘
池ノ平近くから望む八ッ峰
池ノ平近くから望む八ッ峰

池ノ平小屋前の断崖に咲く花々
池ノ平小屋前の断崖に咲くトリカブト、遠景は小黒部谷
仙人池から 仙人池から
仙人池から 仙人池から
8月15日(水)
 
 4時過ぎ目覚めて最終のパッキングと忘れ物が無いか点検して玄関先へ荷物を移動させる。6時少し前、朝食を済ませ、小屋のスタッフ、知人に別れを告げ帰路の下山につく。 下山ルートは雨の中の歩行を余儀なくされた、北俣雪渓のルート写真を記録する目的もあり登ってきたルートを戻ることにする。7時、池ノ平小屋で新井さんから小屋紹介のメモを頂き、掲載する約束をして北俣雪渓へと向かう。池塘の広がる池ノ平を後に、雪渓に取り付く急な登山道を下り、30分程で雪渓に降りる。カメラを取り出し、ルートの目印を確認しながら記録していく。このような動作を繰り返しながら二俣の橋に8時30分到着する。小休止の後、真砂沢ロッジに向けて出発する。
 9時40分小屋前に着く。ここで大阪のグループからはしご段乗越のルートに誘われるが、彼らは、内蔵助の先でもう一泊する計画のため、僕としては初めてのルートとあって行程時間を把握できないためあきらめる。
 9時50分、テント場を抜けて剱沢雪渓を登り出す。容赦なく直射日光が降り注ぐ中、雪渓を渡る心地よい冷気の後押しを得て、順調に高度を稼ぐ。長治郎、平蔵雪渓を過ぎ、やがて滝音が聞こえて来ると、雪渓歩きも間もなく終わる。
 11時、雪渓から夏道に上がり、足場の悪いガリーをジグザグに登る。やがて対岸に剣山荘が見えてくると、旧剱沢小屋跡の石垣のある平地に着く。剱沢小屋は右手前方に大きく近く見えている。10分程で小屋前に着く。
 12時、水分補給を済ませ御前小屋へ。登山道は剱沢テント場を横切り小高くなった尾根づたいに別山乗越へ延びる。ほぼ1時間程度で別山乗越の御前剱小屋にたどり着ける。  13時、室堂バスターミナルへ向けて下山を始める。雷鳥沢まで1qの標識を過ぎた頃、にわかにガスが立山連峰の峰々を覆いつくして、やがては室堂平も深いガスの中へ消える。沢から吹上げる風が強くなり、頬に雨粒を感じる。足早に下山を始め、14時40分雷鳥沢キャンプ場に到着する。周りは重く厚い雲が上空を移動している。まだ雨粒は小さく雨具の必要を感じない。雷鳥沢からミクリガ池への最後の登りは、朝からの歩行で疲労が貯まり思うように先に進めない。半分程登った頃、今回の山行中で最悪な事態に遭遇。それは、いきなりの大粒の雨が落ち始め、急いで雨具を着用する。雨は更に激しさを増しバケツをひっくり返したような雨粒は身体に当たると痛いほどだ。ここまで降られると雨具も役に立ってくれない。登山道は、沢のような状態で登山靴の中まで水が徐々に浸みてくる。15時5分、皮肉なことに、室堂バスターミナルに着く頃には夕立も上がり、室堂平に太陽の光が戻ってくる。
 バスを一つ遅らせ、最終のトロリーで扇沢へ向かうことにする。ターミナルの洋式トイレに駆け込んみ、濡れた衣類を脱ぎ捨て、新しい衣類に替える。温かい缶コーヒーをで冷えた身体にエネルギーを注ぐ。
 16時30分、最終のトロリーバスが大観峰へと向けて走り出す。乗り込んだ客は登山者が大半を占め一般の観光客は数える程だ。降りると間もなくロープウェイが待機しており、積み残しが無いか確認後、下り始める。このような光景が駅ごとで行われ、17時45分、扇沢バスターミナルに着く。
 ターミナルでバスを待つ間、タクシーの運転手が「同乗者を探すから待ってください。」と声を掛けてくる。数分後、最終の信濃大町行きのバスは行ってしまう。残されたのは僕一人、運転手さんは「空で帰るよりいいから、バスと同じ料金でいいよ。」と一言。バスの後を追うようにタクシーも走り出す。途中裏道を走ってバスよりずいぶん早く、信濃大町に着く。
 みどりの窓口で名古屋までの乗車券と最終「しなの」の指定券を購入。発車時間まで駅前の喫茶店で軽い食事をする。
 18時50分、松本行きの普通列車が定刻通り発車。
 20時22分、最終「しなの32号」は名古屋に向けて出発。
 22時23分、定刻通り名古屋に到着。

池ノ平近くから望む八ッ峰

ロープウェイから