行程第一・二日第三日第四日第五・六日
 

8月10日(金)

 仕事を山積みにしたまま、事務所を6時に切り上げて、名古屋駅前の登山用品店に向かう。必要最小限の食料とストックを一本購入。ストックの購入は、雪渓の登り下りに大変役立ち、アイゼンを着けないまま歩行が出来るからだ。但し、アイゼンは必ず持って出かける。急斜面を登ったり、硬くなった雪渓を歩行する時には必ず必要となる。また、登山靴の性能によっても左右され、スリップの危険性を感じたときには、無理をしないで使用することが事故防止にもなる。

 何も準備が出来ておらず携帯品のリストを確認しながら、用途別に買い物ビニールに詰める。一通り携帯品のパッキングが終わった時点で、忘れ物は無いか再チェック。リックへのパッキングはリックの下部は軽い物、上部は重い物がくるように心がけている。雨具類はすぐ取り出せる場所にパッキングしたい。
 汗だくで準備を済ませ、お風呂に入りながら明日からの山行へ思いは馳せる。

 23時50分、妻の運転で自宅を出発。途中でコンビニに寄り、おにぎり、飲み物を購入して西枇杷島駅に向かう。

8月11日(土)

 0時12分、上り最終電車で名古屋駅へ。
 「急行くろよん」号が着くホームの自由席の案内板の下は、グループ、熟年カップルが大小多数のリックを整然と置き、列車の到着を待っている。この列車の利用客は以外と少ないようだ。昨年はこの列車の指定が取れず自由席で辛い思いをしたが、今年は2日前に指定席を確保出来るほど空いているようだった。

 0時25分を少し過ぎた頃、大阪発の「急行くろよん」号がホームに滑り込んでくる。
深夜の控えめな案内放送が流れ、指定の3号車へ乗り組む。案の定席はまばらで、どこの席に掛けても良さそうだ。リックは降車時に手早く支度が出来るため、列車の進行方向の最後部シートとドアの隙間に納めるようにし、貴重品と嗜好品のみを席に持ち込で、後はひたすら目的地まで眠るよう心がける。
 0時45分、定刻通り「急行くろよん」号は、信州に向けて走り出す。
 発車後まもなく周りを見渡して4人掛けの席が出来そうな席へ移り、熟睡モードに入る。

 4時40分、気が着くと列車は塩尻を過ぎ、松本の手前を走っている。車内放送で乗り継ぎ案内が流れてまもなく松本駅に入る。あと1時間たてば信濃大町に着くと思うと、気持ちは無意識に今回の山行への期待感からか、体内の全ての感覚が目覚め「さあ、頑張るぞ!」と魂の叫びに似た活力がみなぎってくる。外は白々と夜が明け始めている。
 4時55分松本駅を出た列車は終着駅大糸線「信濃森上」へ向けて快調に走る。5時30分を過ぎる頃、空は明るさを増し、周りの景色もはっきり確認できる。車中から窺い知る限りでは、昨夜小雨が降っていたようだ。大糸線の「穂高」駅では北アルプスの人気ナンバーワン縦走路「表銀座」、また常念山脈への登山口があるため大勢の登山客が短い停車時間に合わせ急いで下車する。

 5時51分定刻通り「信濃大町」に着く。改札を抜けると待合室に仮設されている登山届提出所があり、目的地の情報を得ることが出来る。急いで必要事項を記入し、駅前のタクシー乗り場で相乗り客を見つける。(定期バスの料金で扇沢バスターミナルまで運んでくれる、但し相乗りで)扇沢バスターミナルへ向かう間に雲が切れ始め、天候の回復が望める。
 6時20分、扇沢バスターミナルに到着するとアルペンルートの乗車券売り場は、長蛇の列があるはずが…。今年はない。通年なら7時00分が始発だか、30分繰り下げの臨時運転があるようだ。すでに売り場は開いていて6時30分発のトロリーバスの出発を促している。急いで乗車券を「室堂バスターミナル」まで購入し、乗り場へ急ぐ。係員の指示に従い満員のバスへリックと共に乗り込む。通常リックは最後尾のトラックに積み込むのだがすでにプルーシートが掛けられている。経験上「黒部ダム駅」での荷物の受け取りに時間が要するため、手元に荷物があることは、次の行動が素早くできる。
 15分ほどで「黒部ダム駅」に着く。最後に乗り込んだお陰で先頭を切って黒部ダム堰堤に飛び出すことが出来き、足早に対岸のケーブル乗り場へ急ぐ。
 ケーブル乗り場で荷物の重量を計測し荷物代金と引き替えにエフを受け取りリックに吊す。ゲーブルを待つ列は見る見る延び、乗車定員で列は区切られる。このときロープウェイの番号札が配られる。急いだ甲斐があって、1番の整理番号を手に入れることが出来た。7時20分、急勾配をケーブルが真っ暗なトンネルに消える。やがて下りケーブルとのすれ違地点で待機し、再び急勾配を上り始める。
 黒部平らからは、雲も切れて満面に水を貯えた黒部湖と後立山連峰の山々(針ノ木、スバリ)が屏風絵のように広がる。また黒部湖の奥には裏銀座の水晶岳を望むことが出来る。ロープウェイの発車時間まで黒部平らのベンチで朝食を済ます。
 8時、始発のロープウェイに乗り込む。ロープウェイ後部の展望の利く場所でカメラを構え、下りロープウェイとのすれ違いを写す。ぐんぐん高度を上げ、やがてガスの中を大観峰駅に着く。大観峰から室堂バスターミナルへは再びトロリーバスに乗る。

 8時45分、室堂バスターミナルに着く。全ての行動が先頭でありながら、大町方面からはどうしても9時近くになってしまう。従って僕の体力からこの日の宿泊地が真砂沢ロッジ泊まりになってしまう。
 ターミナル前にある立山の天然水を水筒に詰め、ミクリガ池方面に歩き始める。雄山に掛かっていた雲も取れ、厳しい日差しが容赦やなく降り注ぐ。毎年利用しているルートで景色も見ないで先を急いで駆け下りる。30分程で雷鳥沢のキャンプ場に着く。雷鳥沢に架かる橋を渡り、河原を100b程進むと別山乗越方面と大日方面の登山道を分ける。ここから別山乗越のある御前小屋へ向けての登りが始まる。よく整備された登山道はこのシーズン、一番の登山客とあって長い列が出来ている。混雑する稜線のルートと違い、ルート幅も広く下ってくる人とのすれ違いに注意を払ったり、速い人を脇に寄って先に通すような気配りも少なくて済む。雷鳥沢から御前小屋までは、ほぼ2qの道のり単純に2時間少々のコースタイムと紹介されている。
 10時30分、御前まで1qの標識を確認し、広くなっている場所で小休止。リックを降ろし室堂を眺めると室堂バスターミナルはほぼ同じ目線にある。
 残り半分気合いを入れ直して、一歩ずつマイペースで高度を稼ぐ。やがて雲が立山連峰の峰々を覆い始め、ガスの中の歩行となる。見上げると前方に剱御前小屋の石垣と屋根が見え、小屋前で集う登山客の声が聞こえてくる。
 11時30分、別山乗越の剱御前小屋前に到着。リックにぶら下げたペットボトルも残り少なく、小屋前に設けられた売店で缶ジュースを購入して詰め替える。30分程のんびり大休止して、剱沢の大下りに備える。
 12時、準備を整えて剱沢小屋・仙人池方面のルートに向かう。周りはガスの中であるが結構明るいのは、雲の層が薄いのか?真上を見上げるとうっすら太陽の位置が確認できる。別山尾根の山腹に付けられた道はやがて剱沢の中央部に向いて下り、傾斜が緩んだ頃一面お花畑の真っ只中にいる。今年は花も終わりったチングルマノ群落が薄紅色の穂に水滴を一杯着けて、キラキラと輝き風に揺れている。お花畑を過ぎると間もなくハイマツの脇を下り、色とりどりのテントの花が咲く剱沢テント指定地の中程に出る。たかが200bの標高差でも周りのガスは濃くなり、雨粒らしき物が落ち始める。
 12時40分、剱沢小屋のテラスに着く。雪渓の情報を確かめた後、水分補給と雨具の準備をして再び剱沢の下り道へ戻る。テント場から延びる緩やかな下り道を進むとやがて旧剱沢小屋跡の平たい大地に出て、剱山荘と真砂沢方面の道を分ける。旧剱沢小屋の右手からハイマツの中へ下ると、すぐにガリーのジグザグ道が剱沢へと続く。沢音が聞こえ始めると眼下には、豊富な水が勢いよく流れ落ちる剱沢の滝が現れる。毎年この滝の下あたりから夏道と別れ雪渓へと降下する。そのとき偶然か、雪渓から上がってくる3名のパーティーに声を掛けると、なんと仙人池の相沢さんである。いろいろ話を伺う間に、今年は小屋を別の人が手伝っていることがわかる。誰だろうと思いながら別れの挨拶をして、雪渓に入る。
 13時40分、ストックを2本にして慎重に下り始める。先ほど相沢さんから伺った情報から雪の状態は良さそうだ。相変わらずガスは雪渓を覆い、慎重に周りの景色を確かめながら先を進む。平蔵谷の巨岩を確認しルートを左岸よりに決め一気に長治郎谷へ向かう。
 長治郎谷の左岸に赤い旗を確認し、夏道の高巻き道へと登る。雪渓はここで一時的に落ちていて大きなクレパスが口を開けている。再び雪渓に降りて下り始めると、やがて真砂沢ロッジが見えてくる。雪渓は、テント場まで続きその先に真砂沢ロッジである。
 14時45分、ロッジに到着。雨具を脱いで宿泊の手続きを済ませ部屋に入る。今年、真砂沢ヒュッテは雪崩で小屋の東側が倒壊し、定員の半数程度の規模になっている。先着していた友達の川出さんは、気持ちよさそうに高いびきで就寝中。しばらくして目覚めた彼と再会の挨拶を交わす。外は雨が降り続いている。

黒部平から針ノ木岳、スバリ岳

黒部平から水晶岳

黒部平から針ノ木岳、スバリ岳

ロープウェイから針ノ木岳、スバリ岳

ロープウェイから針ノ木岳、スバリ岳

雷鳥沢の登り

ヨツバシオガマ

ミヤマリンドウ