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8月15日

 4時、月明かりで目覚める。外は月明かりで青白く八ッ峰は美しいシルエットに浮かび上がっている。カメラを持って池畔へ向かう。すでに数人のカメラマンがシャッターを押すタイミングを待っている。月の位置が高くシャッターを切るまでにはいかない。

 見る見るうちに雲が、二俣、仙人沢の両方から湧いて三の窓あたりに雲が張り付く。あっという間の出来事だ。八ッ峰を覆うのに数分かからぬ早業に落胆の色を隠せない。しかし彼らも百戦錬磨の強者、決して動こうとしない。やがて西の空が明るくなってくるが、後立山の稜線は確認できないほどの雲で、八ッ峰が赤く染まる光景は期待薄である。

 5時を過ぎても事態は好転の兆しはない。それでもカメラを据え付けたまま、いつ何時でもシャッターを押せる準備をして朝食に戻る。

 雲が切れ始めたのは、7時30分過ぎだ。

 8時アタックバックにカメラ水筒を詰め、連泊客の一人と池ノ平へ向かう。

 ヒュッテから仙人峠へと向か道は、途中二俣に下る仙人新道を左に分け、指導票に従って右の峠に登るルートに入る。峠は分岐から見上げた先の一番高いところだ。5分も登れば峠で、八ッ峰がぐんと迫る。この頃になると三の窓の雲も切れ始め真夏の日差しがまだらに差し美しく、慌ててカメラのシャッターを切る。池ノ平へは仙人山の西斜面を巻いて緩い下り道が続く。20、30分で池ノ平小屋前に出る。小屋直下の南斜面には雪渓が残り、例年なら姿を見せる池塘は雪渓の下だ。小屋前から八ッ峰のシャッターチャンスを待つ。池ノ平小屋も仙人池ヒュッテと同様に、プロ、アマのカメラマンの常連客の多くがよく利用する小屋だ。

 30分ほど写真を撮りここから池ノ平山に残る雪田へ向かう。一段上がったテント場の脇をすり抜けて進むと、小窓の雪渓、慰霊碑方面へ向かうルートと池ノ平山へのルートを分ける。ジグザグの笹の中を急騰する。尾根のピークを3つ程過ぎると視界が広がり雪田から流れる水でぬかるんだ道を登り雪田の下に出る。雪田の周囲は雪が消えて間もないためか茶色の草原から青々とした新芽があちこちから顔を見せている。雪田を過ぎ登り勾配がきつくなる頃、一面のお花畑は素晴らしいの一語につきる。

 花の写真を撮りまくり気が付いてみると小黒部谷から雲が沸き上がり、周囲は白いベールに包まれて幻想的な世界と化し、ここまで登ってきた者にしか味わうことが出来ない別世界に酔いしれる。

 お花畑を更にジグザグに登る。お花畑は消えて尾根は狭くなりピークピークに巨岩が横たわる。ここからは三の窓が手に取るように見ることが出来る。巨岩の上に横たわって雲の切れるのを待つ。雲と一緒に吹く風は実に心地よい。仰向けに横たわった視線から雲の 流れを感じ、のんびりとした時間を過ごす。

 雲が切れた。ほんの数分間のドラマを無心にカメラのシャッターを押し記録する。

 昼近くまでここで過ごし登ってきた道を下る。

 13時30分池ノ平の小屋に着き小休止の後、仙人池ヒュッテへ戻る。

 15時30分、ヒュッテに着くと、母さんから開口一番「捜索願を出さならんかと、思っとっちゃ。お昼はどうしたんね、」と心配のお言葉。まだ食事をとっていないためうどんを作っていただく。

 風呂に入り、ヒュッテ周辺をぶらぶら。時折見せる八ッ峰の一部分が仙人池に写り、今にも仙人が雲と共に姿を現すような異次元空間の様に感じられる。

 今夜の食事はホタテのホワイトソース煮をメインにテーブル狭しと料理が並ぶ。

 食事後、部屋に戻り常連客の帰り行の程日等を伺う。ほとんどの方は、一日で室堂または、ハシゴ谷乗越から黒四まで戻り立山をあとに家路に着くとの話だ。そこで予定を変更し更に一泊ここに泊まり、ハシゴ谷乗越経由黒四のルートで山をその日で下り大町から名古屋へ戻る予定に急遽変更する。食堂に戻って母さんへもう一日連泊するむね伝えると、長丁場の帰り行程で最終バスに間に合うかどうか心配とのこと。ただ頑張りますの言葉に、連泊の快諾をいただく。
ヒュッテ前から真砂沢方面を望む
池ノ平から三の窓
池ノ平から三の窓
チングルマ
シナノキンバイ
池ノ平山から三の窓
池ノ平山から三の窓
ショウジョウバカマ
仙人池からから八ッ峰
仙人池からから八ッ峰
ヒュッテスタッフと常連客